子供のころにであった「怖いおはなし」

私は人並みには読書をするほうです。さまざまな作家の作り出す世界観に触れて、ちまちまと想像力を育ててきました。
これからご紹介する本は、すでに絶版になって久しく、中古本が1万円以上もの値がついて出回っています。
でも小学校の図書館では、古びたこの本がまだ置いてあるかもしれませんね。

怖い話、というのもひとつの文学ジャンルになっています。
「幻想・怪奇文学」というジャンルです。
ファンタジーとはまた別のもの、ただ残念なことに、ファンタジーも幻想・怪奇のジャンルも、どういうわけか子供向けとか大人が読むものではないというような偏った見方をされています。

さて、小学生のころに私はこの本に出会いました。友達から借りて読んだ覚えがあります。まわし読みですね。
ただ、子供向けに編集されていながら、実は作品や作家のラインナップがすごいのです。「怖い絵」として挿入されている絵画もキリコ、デルヴォー、エッシャーなどそうそうたる作家なのです。
まず、この絵画に興味を惹かれました。小学生のころからキリコやデルヴォーの絵画集を図書館でさがして鑑賞したものです。美術史の流れに逆らって、シュールレアリスムから入っちゃった状態です。
それから、本文の作品群のすばらしさ。
ロバート・ブロック、アンブローズ・ピアス、P・K・ディック、レイ・ブラッドベリ、H・P・ラブクラフト。中学生になって、創元推理文庫やハヤカワのSF文庫や国書刊行会が発行しているこれらの作家の翻訳本を読んだとき、「ああ、あの話だ!」と膝をたたいて喜んだものです。
ファンタジーや幻想・怪奇小説のすばらしさは、まずその世界観の構築です。ラブクラフトは暗黒神話といって神話体系をひとつ構築してしまいました。指輪物語のトールキン教授は、エルフ語や暗黒語などの言語体系を作りだしています。そして、それをベースにドラマを展開していくのです。ラブクラフトの原始的なもの自分たちには理解できないものへの恐怖心や、ディックの退廃的な未来の絵図(ブレード・ランナーやトータル・リコールやマイノリティ・レポートとして映画化されています)。小学生が怖いもの見たさ面白半分ででも、こういった少し難しめのSF、怪奇作家に触れることができる本当に貴重な一冊だったと思います。たぶん、幻想・怪奇のジャンルなんてよほど興味がないと手に取らないと思うのですよね。
何がどういったことの入り口になるかはわかりません。子供の興味の幅を広げるには、大人もいろいろアンテナを張り巡らして、一見どうよ?と思うものでも手にとって中身を確認してみてはいかがでしょうか?
ちょうどいい入門書だと思います。

復刊してくれないでしょうかねぇ。

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